「天空の城ラピュタ」は日本で絶大な人気を誇り、「バルス」の掛け声に合わせて投稿されたツイートが多すぎてTwitterが一時接続困難になったことは有名な話です。
その「天空のラピュタ」にまつわる都市伝説の中に「パズーたちが悲しすぎる結末を迎えた」という恐ろしいウワサがあるのをご存知でしょうか。
パズーとシータが惨殺されるというエンディングがあったというのです。
にわかには信じがたいこの悲しすぎる結末はパズーの悲劇として一部界隈で未だに語られています。
パズーの悲劇と呼ばれるエンディングは実在するのでしょうか。
「天空の城ラピュタ」にまつわる他の都市伝説も含めて考察していきます。
Contents
天空の城ラピュタ都市伝説がヤバい?
天空の城ラピュタ 幻のエンディング
パズーがシータを
送って行ったという
エンディングが存在するらしいこのエンディングを見た人が
数多くいるがジブリ側は
否定している・・・にもかかわらず、見たという人が多い・・・ pic.twitter.com/b40YBFDO3o
— アニメの都市伝説・雑学 (@animetosi) January 8, 2021
「天空の城ラピュタ」はパズーとシータのラピュタをめぐる冒険の物語です。
パズーとシータの勇気と思いやり、ほんのりとした恋、最近では「バルス」や名言がネタとしても人気を呼び、幅広く楽しめる映画として子どもにも大人にも親しまれています。
そんな「天空の城ラピュタ」にも他のジブリ作品同様、都市伝説は存在しています。
「トトロ死神説」や「ポニョ死後の世界説」のように「ジブリの都市伝説=怖い話」というイメージが強いかと思いますが、はたして「天空の城ラピュタ」の都市伝説も恐ろしいものばかりなのでしょうか。
天空の城ラピュタあらすじ
鉱山で機械工を目指す少年パズーが、空から降ってきた不思議な少女シータを助けたことから物語がはじまります。
シータが持っていた宙を浮遊する力を持つ不思議な石「飛行石」を狙って、空中海賊ドーラ一家の追っ手が二人に迫っていました。
パズーは炭鉱の仲間たちの力を借り、シータを連れてドーラ一家から逃げることができましたが、彼女を故郷から連れ出した軍人ムスカに追い詰められて二人は捕まってしまいます。
ムスカたちの目的はシータと「飛行石」を使って失われた空中都市「ラピュタ」を見つけ出すことでした。
パズーを逃がすためムスカに従うことに決めたシータのおかげで、パズーは金貨をいくらか握らされて解放されたものの、シータを助け出すためにドーラ一家の一員になり一団と共にシータの囚われている要塞へと向かいます。
一方、シータは祖母に教わったおまじないを思い出し、ふと口にすると、「飛行石」は光を放ち要塞の地下に収めらていた「ラピュタ」のロボットが覚醒してしまいました。
ロボットはシータを見つけ出すと塔の上から手当たり次第に周囲を攻撃し、要塞は燃え上がります。
そこへ空からやってきたパズーがシータを救い出しますが、シータの落とした「飛行石」がムスカの手に渡ってしまいました。
二人はドーラ一家の元で下働きをしながら、「飛行石」の光が指し示した先にあるという空中都市「ラピュタ」を探します。
しかしドーラ一家の飛行艇がムスカたちに見つかり攻撃を受けます。
絶体絶命の中、「ラピュタ」が隠れているという雲の渦「竜の巣」が目の前に現れました。
風が逆に吹く「竜の巣」に近づくことは機体がバラバラになる危険性がありましたが、イチかバチかパズーたちは「竜の巣」の中へと飛び込みます。
そして気が付くと、パズーとシータは、草木が茂り廃墟と化した「ラピュタ」にたどり着いていました。
ほどなくして「ラピュタ」にたどり着いたムスカは本性を現し、シータを捕まえると、兵器としての力を秘めた「ラピュタ」を「飛行石」を使って操りはじめたのです…。
天空の城ラピュタに関する、さまざまな都市伝説
「天空の城ラピュタ」の都市伝説をいくつかみていきましょう。
・バルスはトルコ語で「平和」?
・「ラピュタ」というタイトルは海外ではNG
・シータはドーラの若いころそっくり⁉
・ラピュタ崩壊のシーンに映ったムスカの最期
・ムスカには子孫がいた!「未来少年コナン」のレプカ
・「幻のエンディング」ハッピーエンドとバッドエンド
バルスはトルコ語で「平和」?
「天空の城ラピュタ」の中で滅びの呪文として唱えられている「バルス」ですが、その由来とされているのはトルコ語で「平和」を意味する「バルシュ」ではないかとする説が存在します。
しかしこれに対して、宮崎駿にインタビューを行ったことのある漫画家兼編集者の竹熊健太郎はTwitterで、諸星大二郎の漫画「マッドメン」が元ネタであるとするツイートをしました。
宮崎駿が「マッドメン」を愛読していたことはインタビューによって確認されており、作中の言語、ピジン語に「バルス」という言葉そのものが出てきていることから、「バルスの語源はピジン語」とする説が現在最も信ぴょう性の高いものとなっています。
「ラピュタ」というタイトルは海外ではNG
日本では大人気の「天空の城ラピュタ」ですが、北米版タイトルは「Castle in the Sky」、フランス版も「Le Château dans le Ciel」と、どちらも単に「空中の城=空飛ぶ城」を意味する言葉で「ラピュタ」という名称は使われていません。
これには深い事情があり、「ラピュタ(Laputa)」はスペイン語で「娼婦」や「売春婦」を意味する言葉で、タイトルとして不適切であると判断されたため、海外版では名称が変更されたのです。
外国の方に「ラピュタ」と言っても通じないので注意しましょう。
シータはドーラの若いころそっくり⁉
ドーラ自身がシータを「私の若いころにそっくり」と評するシーンがあります。
ドーラの息子たちはこのセリフにぎょっとしていましたが、実はこの言葉が真実である証拠を映画の中に見ることができるといいます。
ドーラがシータを自室に招いたシーンの背景、ベッドサイドのタンスの上に飾られた絵は若かりし頃のドーラだというのですが、確かにシータそっくりなのです。
作中で活躍していたドーラと比べると全く別人のような美女として描かれています。
単に無理やり美しく描かせただけ、というのもドーラの性格からしてあり得ない話ではないですが、宮崎駿直筆の設定資料にも18歳の美しいドーラが描かれているので、元は美女だったことは間違いないようです。
あまりにも容姿が変わってしまっていることから「顔が広く知れ渡った海賊のドーラが出産を機に子どもたちに危害が及ばないよう整形したのではないか?」とする説もあるようですが、根拠はなく、「それなら海賊をやめていてもおかしくはないのでは?」と疑問視する声もあります。
ラピュタ崩壊のシーンに映ったムスカの最期
「バルス」によって崩壊を始めたラピュタは、巨大な飛行石を絡めっとった木の根から建造物の瓦礫がはがれ落ちて宇宙へと昇っていきます。
ばらばらと落ちていく無数の瓦礫にまぎれて、ムスカと思しき人物が落ちていく様子が小さく描き込まれているのです。
ラピュタの隠されていた「竜の巣」が積乱雲だとすると、発生する高度は低いのですが縦に大きく発達するのが特徴です。
雲自体の大きさは、本作の舞台のモデルとされるヨーロッパ周辺では小さくて5000Mほど、大きい場合は16000Mにもなるというので、どんなに低く見積もってもラピュタのあった位置は地上から2000Mを超える高さだったと考えられます。
死んだことがはっきりと描かれているわけではありませんが、ムスカの生存は不可能でしょう。
ムスカには子孫がいた!「未来少年コナン」のレプカ
このウワサが本当であれば、「天空の城ラピュタ」の物語が始まったときにはすでにムスカには子どもがいたということになります。
まだ13歳のシータを追い回したり、ラピュタの再興(つまりはシータに婚姻を暗に迫っているのでは?)を堂々と語ったりと、人の親とは到底思えないムスカですが、どうやら事実のようです。
宮崎駿が「天空の城ラピュタ」以前に製作した「未来少年コナン」は、ラピュタから二世紀ほど未来の話にあたるのですが、「未来少年コナン」に出てくる悪役レプカという登場人物がムスカの子孫であるとジブリが書籍で紹介しています。
このほかにも、宮崎駿の手掛けた「ルパン三世」のテレビシリーズにラピュタのロボットの原型となったロボット「ラムダ」が登場していたり、「未来少年コナン」の続編の案から派生して作られた庵野秀明監督のアニメ「ふしぎの海のナディア」が「天空の城ラピュタ」と似ているといったことも事実でありながら都市伝説として語られています。
ジブリの中でも「天空の城ラピュタ」の都市伝説は、由来や初期設定に関するウワサや宮崎駿が手掛けた他作品とのつながりを感じる裏設定など、現実味のある話が多く挙げられていることが特徴といえるでしょう。
悲しすぎる結末パズーの悲劇って何?
ラピュタの竜の巣の中のシーン
無音だしいパズーのタッチが妙にリアルになるし怖かった(今見ても怖い)
画像は拾い物
#こどものころ怖かったもの pic.twitter.com/BHlYFMYunV— 白井ねこ@ (@shiroineko0220) May 6, 2017
「天空の城ラピュタ」の都市伝説の中でもとりわけショッキングな話が、パズーの悲劇と呼ばれるバッドエンドの存在です。
エンディングとして、ドーラ一家の手によって殺されたパズーと手足を切断されたシータの映像が流れたというウワサがあります。
「天空の城ラピュタ」の都市伝説で最も有名とされる「幻のエンディング」と合わせてみていきましょう。
幻のエンディングがあった?
「幻のエンディング」と呼ばれる都市伝説は、語り手によって多少の違いはありますが大筋として「ラピュタでの一件の後パズーが故郷に帰ったシータに会いに行く」というエンディングがあったとするものです。
しかも、そのエンディングを実際に見たという人が続出した点がこの都市伝説の特徴として挙げられます。
これについてはネット上で多くの考察がなされ、「小説版の後日談を映像として見たと勘違いしている」とする説や、「10年以上前に日テレで放送された独自編集のエンディングに関連資料にあった静止画を差し込んだため」とする説など、説得力のある仮説が散見されます。
前者については、ジブリが公式で「幻のエンディング」の存在を否定した上で「小説の後日談から想像が膨らんだのでは?」という見解を示していることがより説得力を与えているようです。
また、後者にある静止画というのが、パズーがオーニソプター(手製の飛行機)に乗ってシータに手を振っている様子が描かれたものであり、「パズーがシータに会いに来た」シーンそのものに見えることから、現在ではこちらの説が支持されているという印象を受けました。
ネット上ではこの二つの説が主に取り上げられています。
実は自分自身この「幻のエンディング」を見たと思っていた人間なのですが、どちらを見ても納得のいくようないかないような、微妙な感覚です。
前者に関していえば、自分は(ジブリファンとしてはお恥ずかしいことですが)小説版を読んだことがなく、小説版から影響を受けてエンディングを妄想したとは考えられません。
また、後者についても「言われてみればこんな感じだった気がする」という程度で、なんだかすっきりしないのです。
自分個人に限っていえば、「幻のエンディング」という都市伝説が語られ始めたごくごく初期から多く見られた意見を支持します。
それは「見たような気がするだけ説」です。
映画本編のシーンや、セリフの中から想像される情報から記憶を補完した結果生まれた、自分の脳内エンディングにすぎない、という否定的な意見ですが、案外これが一番有力なのではないでしょうか。
「幻のエンディング」を見た人の声の中には「シータとパズーが暖炉の前で会話するシーンがあった」「パズーのセリフも覚えている」「二人が握手していた」といった上記の仮説では説明のつかないものも見られます。
確かに小説版も、日テレ独自のエンディングも影響しているでしょうが、ふたを開けてみれば「幻のエンディング」はそれぞれの頭の中にしかないものなのかもしれません。
悲しすぎる結末パズーの悲劇とは?
パズーの悲劇とは、「惨殺されたパズーの側に、ダルマ(手足を切り落とされた状態)にされたシータが並べられている映像がエンディングとして流れた」「しかも二人を殺したのはドーラ一家」という都市伝説です。
中にはパズーもダルマにされていたとする記述をするものもありました。
先述の「幻のエンディング」とは反対に、この都市伝説はあまり知られていないようです。
さまざまな形で検索しても「調べても出典がわからず目撃情報も根拠もみつからない=ガセである」とする記事に行き着くばかりでした。
常識的に考えても、そのようなグロテスクなシーンを地上波でエンディングとして流すとは到底思えません。
唯一出どころの手掛かりになりそうなものとして、2009年ごろにはすでに都市伝説として存在していたらしい記述を見つけることはできましたが、それ以前にどこでどのように語られ始めたものであったかをたどることはできませんでした。
信ぴょう性が低く、かなりマイナーな都市伝説であることは間違いないようですが、意外にも細々と現在まで消えることなく残っており、素人が調査した限りでも2017年~2020年に作成された記事を見つけることができたということは、一部界隈では根強く残っているウワサということでしょうか。
ではなぜ、根も葉もない話が都市伝説として語られはじめたのでしょう。
パズーの悲劇について書かれた数少ない記事の中でも、恐らく誰かの冗談やでまかせが発端だろう、という考察がほとんどでした。
冗談半分の書き込みがネット掲示板で広がり都市伝説となったという可能性は高いです。
どうしてそのような、恐ろしい捏造をしたのでしょうか。
ここからはあくまで憶測ですが、これは「天空の城ラピュタ」の都市伝説といわれるものに怖い話がなかったからではないかと考えました。
ジブリ作品の都市伝説というと死後の世界や登場人物死亡説など物騒なものも珍しくありませんが、どれも何かしら作品の中に根拠になりそうな薄暗い雰囲気や裏設定を疑いたくなる描写がみられます。
しかし、「天空の城ラピュタ」の都市伝説は恐ろしいというより豆知識的なものがほとんどで、無理やりな解釈をしても怖い話を作ることが難しかったのではないでしょうか。
だから、ジブリ的怪談話を作るにあたって「幻のエンディング」のあいまいな目撃談に便乗して「こんな恐ろしいエンディングもあった」とする突拍子もない主張が生まれたのかもしれません。
この明らかなガセネタが現在まで残っているということ自体が最も不可解な謎といえるでしょう。
まとめ
『天空の城ラピュタ』で、最後パズーがシータに飛行機で会いに行くエンディングのバージョンがある、というジプリ公式にも明確に否定された「都市伝説」が、ある意味正しかった(最後そのシーンを描いた1枚絵で終わるTVバージョンがあった)という話は好きだけどね。 pic.twitter.com/ZvIBviOXQ9
— キタトシオ (@kitatoshio1982) July 30, 2020
「天空の城ラピュタ」の都市伝説ついて考察していきましたが、豆知識的なものが多いのが特徴で、あまり怪談じみたものは見られませんでした。
「パズーが殺され、シータはダルマにされた」エンディング、パズーの悲劇ともいわれる悲しすぎる結末については、誰がどこで言い始めたのかもわからない真っ赤なウソで間違いないでしょう。
パズーの悲劇というウワサが生まれた背景には「天空の城ラピュタ」の都市伝説に怖い話がないということがあり、他のジブリ都市伝説と共に怪談として語るため無理やり悲しすぎる結末を捏造したのではないかと考えられます。
全く根拠のないガセネタでありながら、なくなることなく未だに細々と語られていることが最大の謎といえるのではないでしょうか。